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税務ガイド

スペイン移住と税金:所得税・ベッカム法・富裕税・日本の年金の扱い【2026年版】

スペインの税金は本当に高いのか、居住者になる条件、税率、ベッカム法による軽減、日本との二重課税の調整をわかりやすく解説します

「スペインの税金は高い」とよく言われますが、実際には、収入の種類、住む州、ベッカム法が使えるかどうかで大きく変わります。この記事では、スペインの税務上の居住者になる条件、所得税の税率、デジタルノマドやリモートワーカーが使えるベッカム法、富裕税と相続税、海外資産の申告義務、日本の年金や不動産収入の扱いを、日本人向けに整理します。

先に結論

  • 1年に183日以上スペインにいると税務上の居住者になり、全世界の所得に課税されます
  • 所得税は累進で、州によって異なりますが最高税率は47〜50%前後です
  • ベッカム法が使えると、所得税が一律24%(60万ユーロまで)になり、海外資産の申告義務もなくなります
  • 富裕税と相続税は州ごとに大きく異なり、マドリードやアンダルシアはほぼ免除、カタルーニャは課税されます
  • 日本との租税条約により二重課税は調整され、日本の年金は原則としてスペインで課税されます
パセジ・ダ・グラシアに立つガウディのカサ・バトリョ

第1部:税務上の居住者になる条件

スペインの税務上の居住者になるのは、次のいずれかに当てはまる場合です。

  • 暦年(1〜12月)のうち183日以上スペインに滞在している
  • 経済活動の中心や主要な利害がスペインにある
  • 配偶者と未成年の子どもがスペインに居住している(反証がなければ居住者と推定されます)

居住者になると、日本を含む全世界の所得がスペインの課税対象になります。居住者でない年は、スペイン国内で生じた所得だけが対象で、税率は原則として24%(EU域外居住者)です。1月に入国して年末まで住めばその年から居住者、7月以降に入国した年は非居住者として扱われるのが一般的です。

第2部:所得税(IRPF)の税率

所得税は国と州が半分ずつ課税する累進税で、州によって税率が異なります。2026年の国の税率表をもとにした合計税率の目安は次のとおりです。

  • 12,450ユーロまで:約19%
  • 12,450〜20,200ユーロ:約24%
  • 20,200〜35,200ユーロ:約30%
  • 35,200〜60,000ユーロ:約37%
  • 60,000〜300,000ユーロ:約45%
  • 300,000ユーロ超:約47%(カタルーニャ州は約50%)

給与所得者には年2,000ユーロ程度の控除と基礎控除(5,550ユーロ)があり、年収4万ユーロの単身者で実効税率は20%台前半です。自営業者(autónomo)は所得に応じた社会保険料(月約200〜600ユーロ)を別途納めます。貯蓄所得(利子、配当、譲渡益)は別の税率で、19%から30%(30万ユーロ超)です。

第3部:ベッカム法(インパトリエート税制)

スペインに移住した人が使える特別税制で、正式には「インパトリエート制度」、サッカー選手のベッカム氏が利用したことから通称ベッカム法と呼ばれます。適用されると次のようになります。

  • スペイン国内で稼いだ給与や事業所得に、60万ユーロまで一律24%、超過分は47%で課税されます
  • スペイン国外の所得(日本の不動産収入、配当など)は原則としてスペインで課税されません
  • 海外資産の申告(モデロ720)と富裕税は、スペイン国内の資産に限られます
  • 移住した年と、その後5年間の合計6年間適用されます

主な要件は、スペインに移住する前の5年間にスペインの税務居住者でなかったこと、移住の理由が雇用契約、デジタルノマドビザによるリモートワーク、起業家としての活動、会社役員への就任などであること、そして移住から6か月以内に申請することです。2023年の改正で、デジタルノマドビザで入国するリモートワーカーと、その配偶者・子どもも対象になりました。日本の会社に雇用されたまま、または日本の顧客からの業務委託で働く方は、この制度を使えるかどうかで手取りが大きく変わるので、入国前に必ず確認してください。

バルセロナの中心、カタルーニャ広場

第4部:富裕税と相続税

富裕税(Impuesto sobre el Patrimonio)は、純資産に対して年0.2〜3.5%程度を課す税で、州ごとに控除や免除が異なります。マドリードとアンダルシアは州の税を全額免除していますが、2023年から国の「大資産連帯税」が導入され、純資産300万ユーロ超には全国で課税されます。カタルーニャ州は純資産50万ユーロ(自宅は30万ユーロまで非課税)から課税されます。居住者は全世界の資産、非居住者はスペイン国内の資産が対象です。

相続税・贈与税も州ごとに差が大きく、マドリードやアンダルシアは配偶者と子どもへの相続がほぼ非課税ですが、カタルーニャは一定の控除のうえで課税されます。日本の相続税との関係も含め、資産が多い方は移住前の設計が欠かせません。

第5部:海外資産の申告義務(モデロ720)

居住者は、スペイン国外にある資産(銀行口座、証券、不動産)が種類ごとに5万ユーロを超える場合、毎年3月末までに申告書(モデロ720)を提出する義務があります。日本の銀行口座や投資信託、実家の持ち分も対象です。課税ではなく情報申告ですが、未申告の罰則があるため、移住した翌年の申告を忘れないようにしてください。ベッカム法の適用者は免除されます。

第6部:日本の年金・不動産収入・退職金の扱い

日本とスペインの租税条約(2021年発効)により、同じ所得に両国で課税される場合は調整されます。主な取り扱いは次のとおりです。

  • 日本の公的年金(国民年金・厚生年金):スペイン居住者は原則としてスペインで課税され、日本では課税されません。日本で源泉徴収された場合は、租税条約の届出で還付を受けられます
  • 日本の不動産収入:日本で課税され、スペインでも申告したうえで、日本で納めた税額を控除します
  • 日本の退職金:受け取る時期と居住状況で扱いが変わるため、移住前の受け取りを検討する方もいます
  • 日本の株式の配当や譲渡益:日本の源泉徴収は条約の軽減税率が適用され、スペインでも貯蓄所得として申告します

日本の住民票を抜き、非居住者になる手続き(納税管理人の届出など)も、出国前に済ませておきましょう。

第7部:移住前に確認したいこと

  • 入国の時期:7月以降に入国すると、その年は非居住者として扱われ、税務上の準備期間ができます
  • ベッカム法の適用可否:雇用形態と契約の内容を、入国前に専門家と確認します
  • 州の選択:富裕税と相続税の違いは、資産の多い方には居住地選びの材料になります
  • 日本側の手続き:住民票、年金、不動産の納税管理人、確定申告の方法を整理します
  • 申告の期限:スペインの所得税申告は毎年4〜6月、モデロ720は3月末です

まとめ

スペインの税金は、一般的な給与所得者にとっては日本と同程度か少し重い程度で、ベッカム法が使えるリモートワーカーや役員にとっては日本より軽くなることもあります。富裕税と相続税は州で大きく差があり、日本の年金はスペインで課税されるなど、日本とは異なるルールが多いので、移住前の設計が結果を左右します。当社では、提携する税理士とともに、ビザの選択と税務の設計を合わせてご提案しています。

本記事の内容は執筆時点の一般的な情報であり、個別の税務助言ではありません。税率や制度は毎年変わりますので、実際のご判断にあたっては税理士や各機関の最新情報をご確認ください。

写真: Bernard Gagnon / CC BY-SA 3.0 · Matti Blume / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)

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